BLUE MAP [1st story] ・・・ああ 暗い。 ここには影も光も存在しない。 (まるで、牢獄・・。) レナ姫の分身とよばれた――ピンクの髪の少女は、 ベッドに伏せていた顔を上げた。 レナ姫と、同じ顔は、ひどくぐちゃぐちゃになっていたが。 ふと、自分の髪を手にとって見つめる。 この色は、自分にとって忌まわしいものでしかない。 だが、少女の目にはひどく、光を持っているかのように、鮮やかに映った。 (この髪だっただけで・・私は、こんな・・所で・・・・?) 私・・は。私、が。本当のレナ姫・・。 ・・いや。姫であった前に、私は今でもレナ。 (きっと・・そうよ。) 言い聞かせるように、心の中で何度も繰り返した。 自分の代わりの人の記念式典を前に、 不安な気持ちが少女を潰してしまいそうだった。 ・・・ここには影も光も存在しない。 (何も・・ない・・?) ・・私は何でこんなところにいるの? 私が何をしたっていうの? (私は私であり続けたかったのに・・・。) (・・・うじうじしているだけでは、ダメ。) レナは、何かを決めたかのように立ち上がり、 じっと外を見ていたかと思うと、 こぶしを突き出したり、蹴りの練習をしたりし始めた。 少女――レナは、気が遠くなりそうなほど長い、 暇な年月を、体を鍛えるのに費やしていた。 物心付いた頃には、すでにものすごい力を持ったという。 しかしレナは逃げ出そうとは考えなかった。 (1人では、何をしてもつまらないけど。) おそらく、姫でいたらできなかったであろう。 ――コツ・・コツ・・コツ・・コツ・・・ 何か、軽そうな足音が聞こえた。 早めなその足取りから、早歩きをしていることが伺える。 ――“あいつ”じゃない・・。いったい・・誰?? この通路を知っているのは女王だけのはずだった。 女王以外、この部屋に来たことがない。 足音は、もうトビラの近くで、とまっていた。 「誰・・?」 レナは、思い切って、姿の見えない人物に、問いかけてみた。 それは、レナのほうを恐る恐る覗き込んできた。 その顔は、深く布をかぶっていて、ほとんど隠れていた。 鼻から下しか見えないが、細さから、 顔立ちの綺麗な女の人だということを予測させた。 レナは、その女の人を見たことがあるような気がした。 なかなか返事が来ないので、レナは、先に口を開いた。 「――・・レナ姫??」 レナが恐る恐る言うと、女の人は、その顔にかかる布を、 後ろへずらした。 その顔は、気まずい・・というような表情だった。 そしてその口は動いた。 「よ・・く・・・、わかったわね。」 それに対してレナは、皮肉さを込めた声で、言う。 「私がその整形された顔を忘れられるわけがない。」 その言葉に、レナ姫は、眉をひそめて斜め下を向いた。 「・・・私が望んだことじゃないわ。」 それでも姫はうつむいて、悲しそうに目を細めた。 「・・・・・・。」 レナは、何故か何もいえなかった。 (会って、言いたいことはいくらでもあったはずなのに・・。) 「どうして?」 そんな二人の間にできた、沈黙を破ったのは、レナ姫だった。 「どうしてこんなことになったのかしら・・・。」 (・・それは、こっちのセリフ・・の・・はず・・じゃない。) レナは、そんな言葉に、違和感を感じた。 「・・・・・・。」 レナも、顔をしかめ、斜めを向いた。 レナは、何も答えることができなかった。 姫は、自分を覆う布のフードをはいだ。 そして眉をひそめ、衝撃的な言葉を口にする。 「あなたは! 今年の式典で処刑されるの!!」 レナの心は、爆弾が落とされたようにポカリと穴を開けた。 「な・・・な・・にそれ・・。」 レナは肩の力が抜け、レナ姫の方を愕然とした顔で見、 衝撃で動けなくなった。