BLUE MAP [2nd story] 「どういう・・こと?」 レナはわけもわからず、問う。 “レナ姫”は、“レナ”に、話した。 催し物のマジックショーで、 カラーコンタクトとウィッグを使って“茶色のレナ”にされ、 布をかぶせて何本もの剣や槍で刺される。 そして“レナ姫”が無傷で無事、登場。 ということだった。 レナは血の気を失いそうになったが、しっかりとした口調で言った。 「そう・・。“公開処刑”と記されたもの、とかじゃないのね。  よかった。・・これで、解放される。」 ――桃色の髪と、紅の瞳の、呪いから。 な・・っ、と、姫は鉄砲玉を食らったような顔をした。 「あ・・なたは・・っ、生きていたくはないの!!?」 それでいいの・・!!?、とレナ姫は問いかけた。 それに対して、レナは、さらに驚いたような顔をした。 (なんでこんな・・?) 次の瞬間、レナは、言おうとしてないが、 そのまま思ったことを口にしていた。 まるで口が勝手に動いているかのように。 「なんでこんな、必死なの?」 「なんでこんな私に・・そんなに必死なの・・?!」 「なんで・・なんで・・こんな私に・・  そんなに・・  必死になってくれるの・・!!?」 ★ (あと少しで私は死ぬ・・・。) 赤色の目が揺らぐのはとまったが、 心の揺れはとまってくれなかった。 ・・・姫は、抜け出したのがばれるといけない、 と自室に戻っていった。 (・・なんであんな、必死に・・・。) まだ、姫の表情が、去る前に見せた笑顔が、 頭から離れなかった。 (あのあと、姫は微笑んだだけ。・・どういう意味なんだろう。) しかも、なぜ今日に限って、少しでもこの部屋に来ることができたのかが。 妙に引っかかった。 (もしかして・・罠・・? ・・気にしないでおこう。) 最初から誰も信じられなかったから、何も無かった事にしようとした。 信じた事もないし、裏切られたり騙された、とはっきりはしたことは無かったが、 何故か、人間を信じることが嫌だった。 あとが、怖いからだ。 そもそも、最初から、信じる事ができなかった。 ★ 世間では仮面の集団の話題で、持ちきりだった。 その名も、『マスカレード・カンパニー』という。 カンパニーといっても、怪盗――否、盗賊の集団である。 団員は皆、色や形はバラバラの仮面にタキシード、という格好をしているらしい。 ――そんな、マスカレード・カンパニーは、 なんと、このレナ姫のいる国――トリカスターという崖の上に立つ城に、 怪盗の予告状をつきつけてきた、という。 『レナ姫を頂く』 という内容の。 予告上は、白いの仮面に、文字が書かれている、といった物である。 しかし、身代金目当てなら、予告は出さないはずなのでは・・? 悪戯なのでは・・? と言われ、何の警戒も無く、 レナ姫の誕生記念の式典は開催されたようだ。 式典の会場の大ホールには、姫と女王がいすに座っていた。 その周りは、5・6人のボディーガードで固められているだけだった。 そして、その城の大臣は、マイクを持って、姫にはなむけの言葉を述べていた。 会場は、トリカスターの全国民が歓声をあげている。 だがその頃、“レナ”はまだ、地下の部屋にいた。 牢獄の中の、唯一光が差し込む、白い四角をただ呆然と眺めている。 これまでも、気が遠くなるほど長い時間を何度も、 何度も越えてきた。 思えば生まれたときからそうだった。 生まれたときから楽しいことなんか、 心から喜び、心から笑ったことなんか、 一度も無かった。 (私は呪われた子なんだ・・。) この目が厄を呼ぶから。と、 この髪が恥になるから。と、 ずっとここに押し込められてきた。閉じ込められていた。 それはこれからもずっと、変わることなく そのまま生きてゆくんだ、と思っていた。 暗闇の中、いつも赤い目を光らせていた。 それがこんな風に、短い命で、誰にも知られず死んで行くのだとは、 思わなかった。考えてもみなかった。 (私は死にたいのかな・・?死にたくないのかな・・?  私は・・・。今まで何をしていたのだろう。  そもそも、今まで本当に存在していたのだろうか。) レナはまた、立てた膝にうつぶせた。 刹那 ――ドッ、 と 爆風と爆発音が頭の後ろで響いた。 「・・・・・・!」 爆風に、髪が揺らめく。 恐る恐る、顔を上げてみる。 そして、その赤い目に映しだされたものは、 空と光と、眩しさと、よく見えないが――動物が2匹。
2005.12.31. nagatuci
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