自分。 自分を見つけるため。自分を取り戻すため、俺は、自分を追いかける旅に出た。 無理だと言われながら、馬鹿だと言われながら、旅に出た。 そんなのわかってるつもりだ。 それでも、もう旅に出ちまったものは仕方ない。 ――・・俺は、もう日本にはいない。そして、今、すごくキレイな山にいる。 そして俺は山に向かって、情けなく言い、最後、叫ぶ。 「・・待ってくれ。戻ってきてくれ、あいつを好きだった頃の、俺!」 コトバなんかわからないだろうが、もし人がいたら、人は、俺を見るだろう。 なんて恥ずかしいヤツなんだ、 と。 そんなことはわかってる。 ・・・俺はずいぶんかわってしまった。 前の俺だったら、今頃あいつと一緒に笑ってた。 俺は、随分と変わってしまった。 昔の俺のほうが、今よりもっと幸せそうで、純粋で、 笑ってた。 変わらずにいれたらばよかったのに。 「変わっていくのは嫌だ! かわるのは、怖い。」 1人なのに、よく、叫べるな。何叫んでんだ。アホか。 そう思いつつ叫んで、木霊のみを聞いている。 「教えてくれよ。なんで俺は変わっていくんだ!!?」 新鮮で澄み切った、空気を吸う。 「待ってくれよ! 俺が俺でなくなるみたいじゃないか!!」 とか何とか叫んでる。そんなコトバ、誰が聞くんだ。誰に向かって言ってるんだ。 ふと、俺は思いついた。 ――そうだ。 そうだ。自分自身が、じゃないのか? 自分自身に、じゃないのか? そうだ。 そうだ。そうだ。そうだ。 そうだ。自分だ。自分自身だ。 ――見つけた。 やった。やってみせた。 「ぃやった!!!」 ・・何叫んでんだろ。俺。 俺は俺のなかに、俺だけの力で、 見つけた。 俺を。 「やっほー俺!! やったぜ! 俺!!!」 見てるか?今までの、自分であった、俺! さよならだ。 返ってきたのは、誇らしげな俺の声と、 あいつを好きだった頃に負けないくらいの、自分のなかに芽生えた勇気と、 通り過ぎていく、やさしいかおの人々の、 笑顔と、笑い声。
2005.11.30. nagatuci